アウトドアジジ

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ロサンゼルスの高尾山

 

 

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老ハイカーの誇り


東京でもっとも人気があって多くのハイカーが訪れるのは高尾山ですが、私が暮らす南カリフォルニアのハイカーたちに最大の人気を誇るのがボルディー山です。いわばロサンゼルスの高尾山で正式名称はサン・アントニオ山、3千メートルの高さなので高尾山というよりは雲取山のイメージかもしれません。3千メートルの高山とはいえ若者なら2時間ほどで登れるので冬の一時期を除いて登山口の駐車スペースはいつも満杯です。

 

ボルディー山は都市部から1時間ほどの近さなので1ヶ月に複数回登りに来る人もたくさんいます。日本人と同じように山登りが大好きな韓国系の人たちも多く訪れ、日によっては山道で出会うハイカーが皆んな韓国系だったという日も珍しくありません。そんな韓国系ハイカーで毎日ボルディー山を登りに来る老ハイカーがいました。彼は毎日登ってきてすれ違う人と必ず言葉を交わすのでかなりの有名人でした。

 

私がその老ハイカーとお会いしたのは一度だけでしたが、出会い頭に「お前はいくつだ」といきなり年齢を聞かれました。私自身もけして若くはないので老人同士のライバル意識があったのかもしれません。ずいぶんと失礼な人だなと思いながら自分の年齢を正直に伝えると「俺は74歳だ」と誇らしげに言葉を返してきました。その歳を聞いて私はさすがに驚いて無礼な印象が一気に尊敬の念へと変わってしまいました。何時に登り始めたかとか、何回登っているのかなどの質問が続き、メディアから取材を受けたとか、遠征登山がどうだとか(内容は残念ながらよく覚えていませんが)悪く言うと自慢話が続きました。でも自分よりも一回りは年上の人が元気に毎日登ってくると思うと、私は「ほうほう、なるほど」と感心して話を聞いていたのでした。

 

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著名老ハイカーとツーショット


70歳を過ぎても元気に体が動き、それ以上に、いつでも山に行きたいという意欲を持ち続け実行してきた原動力は何だったのでしょうか。最近、私などは行きたい、登りたいなどと思っても、当日になるとちょっと面倒だななんて感じて止めてしまうことが多いのです。老ハイカーは毎日意地になって登り続けていたのでしょうか。それとも毎朝目が覚めるとワクワクしながら登山口に向かって行ったのでしょうか。自慢話を聞かせるために登り続けていたとしても何だか微笑ましくなってしまうし、今でも凄いなあと関心してしまうのです。残念なことに、その老ハイカーはお会いした1年ほど後にまだ雪の残るボルディー山頂付近から滑落してお亡くなりになりました。もう二度とお会いすることはありません。