風吹き荒れる荒野を馬に乗ったひとりのカウボーイが帽子をおさえながら進んでいく。いくつかの枯草が転がりながら彼の前を通り過ぎる。西部劇によくでてくる一場面ですよね。風に押されて転がり過ぎる枯草はタンブルウィードと呼ばれる植物です。アメリカ西部にはよく見られる植物で風の強い日などは高速道路の上を転がったり、街角の吹き溜まりにかたまったりしてしまいます。
転がってくるタンブルウィードは枯草なので走っている車にぶつかっても大したダメージはないのですが1メートル以上はあたりまえ、車にぶつかりそうになれば思わずブレーキを踏み込んでしまうこともあります。アメリカの小さな子供たちは得体のしれないお化けのようにタンブルウィードを怖がってしまうこともあるようですが、実際は風まかせで転がりまわって種をばら蒔いているのです。
表題の写真は近所のダムの堰堤なのですが、数日前に行った時にはこの堰堤の斜面いっぱいにタンブルウィードが茂っていました。ところが前日の強風でほとんどが飛ばされて転がり落ちてしまいました。(斜面の奥、上の方にはまだ少し残っています)写真のように柵に引っかかったのはほんの一部で、多くが柵を乗り越えて何処かへ飛ばされてしまったようです。タンブルウィードはまん丸い形状をしていて種の準備ができるとちょっとした風でも根元がたやすく外れて転がりだし、転がりながら種をあちこちにばら撒いていくのです。鳥などの手助け無しで自分だけでしっかりと子孫を残していきます。
西部劇の一コマに欠かせないタンブルウィードですが、北米固有の在来種と思いきや実はウクライナ原産とされる外来種だそうです。200年も昔に他の種子に紛れて入り込んだものでロシアでも多く見られるためにロシアアザミなどとも呼ばれています。以前、当ブログでもご紹介したブラックマスタードのように物凄い繁殖力です。
冬が近づく南カリフォルニアでは乾燥した強風が吹き荒れるサンタアナウインドが大規模山火事の原因となっています。町はずれの原野はタンブルウィードやブラックマスタードなど侵略的外来種のカラカラの枯草におおわれ、ガソリンがそのまま原野に撒かれているような状態です。火のついたタンブルウィードが風にあおられて転がりだしてしまうことを想像するととても恐ろしくなってしまいます。