新型コロナ騒動がある程度落ち着いてきたので久しぶりに山に出かけてきました。といっても登り3時間、全行程5時間弱の山行です。若者なら走って2時間で登れる山です。それでも3000メートルの標高で冬には雪も積もります。急登が続いてけっこう息も上がって大変です。これを登山と呼ぶか、ハイキングと呼ぶか、日本では意見が分かれるところかもしれません。
高尾山や御岳山はハイキング、槍や穂高は登山というのが一般的かもしれません。確かに、高尾山登山や御岳山登山というのは受け入れられても、槍ヶ岳ハイキング、奥穂高岳ハイキングというのは違和感があるかもしれません。どうやら標高の高い大きな山を登ることを登山、お気楽な低山の山歩きをハイキングというようですね。英語本来の意味では長時間の徒歩ということで、英英辞典の代表でもあるロングマン辞書ではカントリーを長時間歩くこととなっています。カントリーとは郊外の農業地帯または開発されていない原野となっています。自然の中を長時間歩くことがハイキングというわけです。
言葉の定義などはどうでも良いことなのですが、こちら英語圏では本格登山もアプローチはハイク、急斜面になって手の補助が必要になってくるとクライムと使い分けているようです。つまり大きな山の登山でも歩いて登ることができればハイキングということになります。ところが日本では登山の対象となるほとんどの山には頂上まで道がついています。鎖や梯子などが整備されていて標識もほぼ完璧です。険しい山でも道があるのでハイキングと勘違いしてしまいます。本来は自分でルートを探して岩をつかんで登らなければならないクライミング(本格登山)の領域を誰もが容易に登れるようになっています。
槍や穂高の稜線では鎖場でなくても足が滑って転んでしまえば転落死の可能性があります。若い頃の話になりますが、穂高の滝谷を登攀している時、まだ終了点は遠いだろうと見上げてみるとすぐそこに麦わら帽子のおじさんが登山道を歩いているのが見えたことがあります。岩登りのルートもある危険な場所を歩いていることを本人が自覚するのは難しかったのではないでしょうか。穂高の稜線などは整備された登山道がなければ完全にアルピニストの世界なのです。ハイカーはそう簡単には立ち寄れない場所ということになります。
ある程度の体力があれば登山道をたどって登頂できるのは嬉しいことなのですが、整備された登山道があっても険しい山にはやはり注意が必要ですよね。今回の山は季節を問わず何回も登っているハイキングの山ですが、雪が積もる冬の季節にはやはり遭難者が続出します。一昨年には雪山登山に注意を呼びかける看板が設置されました。冬になって稜線に雪や氷がつけば息の上がった年寄りには危険な領域でしょう。道のついたハイキングの山だからといって油断するのは禁物です。ところで、今回は久しぶりでしたが登りの急なルートを選びました。そのためかひどい筋肉痛が3日続いてしまいました。
写真上:新しく設置されたハイカー向け看板。冬山用は撤去されていました
写真中 :バルディ山頂上