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憧れの北鎌尾根

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北鎌尾根と高瀬ダム

 

加藤文太郎や松濤明の壮絶な遭難で名が知れた北鎌尾根です。北アルプス槍ヶ岳へ突き上げる急峻な尾根で登山や山歩きをする人には憧れのルートです。まだまだ若い学生時代に当時よく一緒に山に出かけた友人とそのルートをトレースしたことがありました。記録は写真しか残っていませんが、6月になってすぐ、まだ雪が残る季節、登り終えた後は何かベテラン登山者に仲間入りしたような気になりました。

 

現在は上高地から入山して水俣乗越を経由して北鎌沢を登る人が多いようですが、本来、北鎌尾根は末端から登るのが正当な登路でした。末端から登るには大町から高瀬川を経由する長いアプローチをたどる必要があります。「うまくすると工事トラックに乗せてもらえるよ」という友人の憶測に騙されてしまったのですが、当時はあの大規模な高瀬ダムがまだ建設中で確かに多くの工事車両が忙しく働いていました。登山道から眺めた建設中のダムには大岩を積載した巨大なダンプが何台も行き交っていました。遠目に眺める巨大ダンプはオモチャのように見えますが、近寄ればビルディングほどの大きさがあります。さらに一緒に働くパワーショベルはその数倍の大きさがあり、近寄ってその大きさを確かめたくなってしまうのでした。

 

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北鎌沢最後の登り、靴底丸見えの急登。


高瀬ダムは石積みのロックフィルダムです。176メートルの堤高はロックフィルとしては日本一だそうです。建設費にいくら投じたかは調べていませんが、まだ日本経済が元気だった頃で、ダムばかりではなく日本のあちこちの沢筋に多くの堰堤が建設されてきた時代でした。当時は自然破壊、税金の無駄使いと大ヒンシュクを浴びましたが、今なら無意味な緊縮財政と覇権的グローバリズムで受注先はすべて外資、日本には投資利益が一銭も入ってこない状況になっていたかも知れませんね。

 

巨費を投じた高瀬ダムですが、上流より流れ込む堆砂の影響で発電機能に支障が生じてくる様相です。 現在はトラックによる搬出で堆砂に対応していますが、225億円をかけてトンネルとベルトコンベアーで対応する計画が進んでいるとのことです。利水から治水へと目的も変わり、流行りのグリーンエネルギーシステムの問題点が浮き彫りになってしまいました。巨大石油資本は将来グリーンエネルギーシステムが行き詰まることを確信していて、世界が脱炭素に騒いでいる間に石油、天然ガス資源を安価で買いあさり大儲けをしようと目論んでいると考える知識人たちも少なくはないようです。

 

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登りついた槍ヶ岳から穂高連峰の眺め


冬の登攀も考えて北鎌尾根は末端から登らなければと考えていた私達でしたが調べてみるとちょっと面倒、雪渓登りで楽ができそうな北鎌沢を攻めてみることにしました。ところが北鎌沢も容易ではなくて長い長い登りで大変だったことを覚えています。それでも心配だった独標も難なく通過して無事に槍の穂先へ登り着くことができました。何十年も経って覚えているのは長いアプローチに疲れ切って到着した北鎌沢出合での幕営。温かい日差しで草の上に寝転がってウトウト、友人の話が心地よい子守唄になって返事も曖昧になってまぶたが少しづつ閉じていってしまうのでした。

 
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