アウトドアジジ

2分で読める? アウトドアのアクティビティ、道具、自然に関するブログです。

韓国インスボン

f:id:midoriiruka:20210702024100j:plain

異文化交流

 何十年も昔の話です。韓国ソウル郊外のインスボンへロッククライミングに出かけました。当時、日本はフリークライミング黎明の時代で日和田山女岩のオーバーハングがフリーで登られたり、小川山に次々と困難なフリールートの開拓が始まった頃でした。ヨセミテのように草木のない本格的な花崗岩の岩場を手軽に登りたいということで五月の連休に訪れました。

 

海外登山とはいってもヒマラヤやカラコルムの高山に挑戦するわけではなく、準備も日本の山へ週末に出かけるのと同じように簡単なものでした。 現地に精通したクライミングガイドも同行し、今なら韓国グルメツアーのような手軽さです。それでも私にとっては初めての海外旅行。同じアジアの隣国とはいってもやはり外国、日本とは違ういろんな事を経験することができました。空港から乗ったタクシーのスピードメーターはブレが激しくて、いったい何キロで走っているの?今ではアメリカで日本車を駆逐する勢いの韓国車も当時はその程度でした。宿泊した山小屋ではオンドルが暖かく、食事は毎回お赤飯、お箸もステンレス製でした。確かに日本とは違う文化がありました。

 

f:id:midoriiruka:20210702120300j:plain

インスボンのクラシックルートを登る

東洋のヨセミテとも呼ばれるインスボンは素晴らしい花崗岩のドームです。岩場の大きさはともかく、雰囲気はヨセミテのハーフドームや南カリフォルニアのターキッツと遜色はありません。パタゴニア創業者のイヴォン・ショナードが韓国で軍役についていた頃に開拓したクラッシックルートもあって、クラック、スラブと数々の好ルートを楽しむことができます。もちろん地元クライマーにも人気があって楽しく国際交流することもできました。

 

f:id:midoriiruka:20210702121121j:plain

韓国人クライマーたちと記念写真

スラブ登攀中に次の一手が出せずにいると、韓国人クライマーはキムチを食べなければ登れないといってポケットからアルミの容器を差し出してくるのでした。蓋が開けられた龍角散のような容器の内側は唐辛子のシミで真っ赤になっていました。韓国人クライマー達の度胸は素晴らしく、ランアウト(墜落を食い止める支点がないこと)が10数メートルに及んでも果敢に挑戦して、よつん這いになったまま何回も上からずり落ちてくるのでした。ツルツルの困難なルートをハイキングシューズにしか見えないぶかぶかのボロ靴で登りきってしまうのを目のあたりにすると、そんなはずはないと知りながらも、何かしら特別なゴムでも貼り付けてあるのではないかと懐疑心も湧いてきたのでした。山の中なのに岩場の下からは大人数の合唱の声(もちろん韓国語)も聞こえてきて異国情緒にどっぷりと浸かってしまうのでした。

 

引き返すことができないほど悪化してしまった日韓関係ですが、今でもインスボンに行けば地元クライマーと楽しい異文化交流ができるのでしょうか。同じ山を楽しむ共通した喜びで必ず楽しい時間が分かち合えることと思います。グローバル化がさらに進み世界中どこへ行っても同じようになってしまう前にしっかりとそれぞれの違いに触れておきたいものです。もちろん新型コロナ騒動がおさまればの話ですが。

 

www.glafis.com