しばらくぶりに 近郊の山へ出かけてみたら山頂に真新しい道標が立っていました。鉄板に文字を打ち抜いた立派なもので、これなら強烈なカリフォルニアの日差しや冬の風雪に長年耐えてくれることでしょう。ただ貧乏性なのでいったいいくらかかったのだろうとすぐに気になってしまいました。
鉄板の加工自体にはそれほどのお金がかかっているとは思えませんが、かなり重そうなので設置作業には当然ヘリを利用したに違いありません。これだけで数千ドルかの費用が必要だったはずです。こういう予算はどこから出ているのかといえば当然あなたの税金からということになるのですが、実際には20年ほど前からこの地域で徴収が始まった入山料からのようです。当時、レインジャーがトイレも新しいものが建ち、駐車場もきれいに舗装されましたと自慢していたのを覚えています。
ロサンゼルス近郊の国有林(ナショナルフォレスト)の利用料金は1日5ドル、年間パスが30ドルとなっています。数年前にこの制度に反対を唱え裁判が起こされ原告側が勝訴して日帰り利用は無料となったはずです。ところが知らない間にまた利用を促す看板が立って多くの人が入山料を払うようになっています。国立公園の高額な入園料(現在はコロナ影響で少し減額されたようです)に比べればこれぐらいならという利用者も多いようです。当初はわりと厳しく徴収されていたのですが裁判の影響か今ではそれほどではないようです。
日本でも推し進められる「小さな政府化」は公共サービスを民営化して競争を促し合理化していこうという考えですが、正にアメリカ型の成熟しすぎた金儲け主義の覇権によるものでしょう。根拠のない緊縮財政政策で実際には収益を産まない多くの公共的事業が継続不能となり、大きな収益を生む事業は巨大企業が独占してしまいます。廃線が続くJR北海道や海外資本による危ない水道民営化が良い例ですよね。
むやみに森林伐採などができない国有林が営利目的で民営化されることはなさそうですが、キャンプ場などの管理ではすでに一般企業の参入が始まっています。大した設備のない簡素なキャンプ場までひとつの民間企業でまとめられ、予約制になり高額な利用料金が徴収される所もあります。利用者の少ない冬季はゲートが閉ざされ静かなキャンプを楽しむことが難しくなってきています。限られた公費ではとても無理だから誰か代わりにやってくださいということです。
私の場合、近郊の国有林では国立公園の生涯シニアパスが使えるので入山料徴収に不満を覚えることはありませんが、まだ若い世代にはたかが5ドルでも無料でないのは納得できないことでしょう。だいいち入山のたびに(年間パスも用意されていますが)面倒くさいことでしょう。それでも国有林が民間企業に管理されるようになってもっと高い利用料金が課せられ「冬季は利益が上がらないので入山禁止にします」なんてことになったら大変です。5ドルくらいなら出費して立派な道標が立てばまずは納得というところでしょうか。