近年のスキー人口の低迷にスキーバブルを経験している世代には寂しい思いをしている人も少なくはないでしょう。この低迷は日本経済の停滞が原因なのは確かですが、さらにコロナや物価高で利用者ばかりではなく経営企業にも大きな影響が出ています。企業側にはより効率的に利益を生み出す戦略が求められています。
私の利用する南カリフォルニアの地元ホームゲレンデでも難しい経営が続いています。もともと温暖で雪が少ない南カリフォルニアでは人口降雪機などのインフラ整備、事故や訴訟に備えた保険料など、日本のスキー場に比べれば莫大な経費が投入されてきたに違いありません。それでも今シーズンの初めには家族経営を貫き、利用者には良心的な利用料金でスキーやスノーボードを楽しんでもらいたいと発信していました。ところがつい先日、大手企業の傘下に入ることを発表し大きな方向転換を図ることとなってしまいました。
設備が改善されることや、傘下のスキー場を自由に行き来できるようになるなど大きな利益が利用者に及ぶとしていますが、実際は大手企業による独占でリフト代の大幅引き上げに繋がることは明白です。買収の詳しい経緯は分かりませんが、難しい経営を投げ出して売り払ったというよりは大資本に不本意ながら買収されてしまっというのが実情ではないのでしょうか。
巨大資本による企業買収や統合というのは我々一般庶民の想像を遥かに越え、何も自動車業界ばかりのことではありません。アメリカではブラックロック、ヴァンガード、ステイトストリートの3社がほとんどのアメリカ大企業の株を買い占めていて筆頭株主となっているそうです。コロナで大儲けした製薬メーカーはもとより、ハイテクIT企業、エネルギー、食品、マスコミに至るまでほぼ全てのアメリカグローバル企業がその傘下にあります。ウォールストリートがアメリカの金融市場ばかりではなく世界の政治経済の覇権を目指している(すでに達成されている)といわれる所以です。
統合された地元のホームゲレンデでは来シーズンから嬉しいシニアシーズン券はなくなり、高額の統合スキー場共通券のみになりそうです。それでも巨大企業の悪徳商法に騙される多くのスキーヤーは5回行けば元が取れるなどといって喜んで購入してしまうのです。ちなみに日本のスキー場はまだまだ安くて、ローカルの町営スキー場などが頑張っていてくれれば適正な競争が保たれ、アメリカ並に高騰してしまうことはないと期待したいものです。もっとも外資が乗り出してきてエリアのスキー場をことごとく買い占めたりしなければの話です。
*例えば北海道の町営スキー場など、日本のスキー文化の継承に大きな貢献をしていると考えます。子どもたちが体育授業の一環としてスキーを練習できるのは日本だけでしょう。供給過剰だから淘汰されるべきというのは企業経営者の一つの考え方で、スキーの普及や業界の隆盛には繋がらないのでは?