昔から自然を楽しむ登山やスキーには密接な関係があって、遊び方も楽しみ方も似通った傾向の人たちが集まっていました。登山する多くの人たちがハイキングもすれば冬山や岩登りにも挑戦する。登山を全くしないゲレンデスキーヤーも雪山に対する畏敬の念のようなものも感じたはずです。ところが最近はそれぞれの楽しみ方が細分化し専門化して、それぞれが互いに関わらず混じり合うことなくまったく異なる文化が発展してきています。
同じ雪山で遊ぶスキーとスノーボードですが、私の住む地域では伝統的に雪山を楽しむスキーヤーとは全く異なる人種(?)がはっきりと確認することができます。もちろん世代間のギャップがあるのは事実なのですが、新しい文化の違いを世代の違いと錯覚している人も多そうです。彼らは滑り方から楽しみ方までスキーヤーとはまるで違う人種なのです。日本ではスキーのようにあくまでも滑りを追求するボーダーも多いのですが、こちらでは何といってもジャンプとグラトリです。ゲレンデで滑るコースも違えば、目標とする技術や楽しみ方も異なります。とても同じ雪山で楽しむスポーツとは思えません。
私が登山を始めた頃、クライミングは登山の一部でした。当時はハイキング、縦走登山、冬山登山と段階的に難易度を上げていき、岩登り(クライミング)は登山のための必須の技術としてその習得の過程で学んでいくものでした。ところが今ではクライミングは屋内のジムで楽しむスポーツ、ほとんどの人が自然の岩場を登ることがありません。そして若者ばかりではなく、やっと歩けるようになった幼児や70歳をこえる高齢者が初めてジムクライミングに挑戦したりすることも珍しくはありません。
昔、野外にある岩登りゲレンデで楽しく練習する初心者グループを「チャラチャラしている人たち」とさげすんだ真剣なクライマーたちも、今ではジムでしか登らない人たちから「外も登る人なんだ」と相手にもされません。持ち金の少ない若者たちはクライミングジムで遊ぶ金はあっても、本格的岩登りには道具に金がかかりすぎるといって外に登りに行くことにまったく興味がないのです。そしてこういう人達がもはや主流なのです。
ジムラット(体育館のネズミ)とはフィットネスジムで体力増進に注力する健康志向の人たちに使われる言葉ですが、野外での冒険的なクライミングを楽しむクライマーがジムでしか登らないクライマーをさげすむ言葉として使われることがあります。無線スピーカーをぶら下げて大きな音でラップを流しながらリフト待ちをするスノーボーダーに白い目線を向けるスキーヤーもいます。大麻の強烈な匂いもスキー場の駐車場に頻繁に漂うになりました。もともと同じフィールドで楽しんでいた登山やスキー、世代間ギャップくらいしか問題が感じられなかった時代から、細分化や専門化によってさらなる理解努力が必要になってきました。