アウトドアジジ

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冬至の赤岳

ビバークの長い夜

登山中の緊急時にやむなく野営になってしまうことをビバークといいますが、できればなるべく避けたいものです。天候の急変やケガなどで夜間行動が思わしくない時には積極的にビバークに入ることが定説となっています。でもやっぱり、凍えて膝を抱えてみじめな夜を過ごすよりはやはり山小屋やテントで暖かい寝具にくるまって休みたいものです。

 

若い頃、冬至の日に八ヶ岳ビバークになったことがありました。大人数で赤岳鉱泉に入り、そのまま赤岳の西壁にとりつきました。私たちは3人パーティーで、頂上で冬山経験組の他パーティーとおちあい一緒に下山する予定でした。初心者組は鉱泉でテントを張り冬山体験です。ようやく雪が付いて冬壁らしくなってきた西壁を難なく登り、頂上で他パーティーを待つことになりました。3人でツエルトを被り行動食などを食べながら1時間以上は待ったと思います。誰も上がってくる気配がないので仕方なくさあ降りようということになりました。ところが一面はガスに覆われ視界はゼロ、だんだん暗くなってきて頂上からの下降ルートがまったく見つかりません。

 

誰かが「ビバークしようか」といったら即決となってしまいました。寝袋などはもちろんありません。ツエルトだけで暖房はロウソク一本です。普通3人いれば1人ぐらいは反対するものです。全員若くて寒さには自信があったのでしょう。自信はあってもやっぱり寒い、大声で「さみー」を連発していました。ところが3人パーティーの強み、馬鹿話もつきることはなくそのうち白々と夜が明けてきたのでした。

 

翌朝はガスも晴れ、見つからなかった下降口も一発で発見、全員安全に下山できたのでビバークの判断は正しかったようです。後続パーティーとの連絡手段がなかったこと、しっかりと下降ルートを探さなかったことなどがビバークになってしまった原因です。苦労して真っ暗な中を降りるのか、寒い思いをして一夜を過ごすのか、今では良い思い出です。鉱泉のテント場まで降りると仲間が心配の様子はまったくなく、ごく普通に「冬至の夜は長かったでしょ」言ってくれました。そうか冬至だったのかと妙に納得したのでした。

 

* 万全の準備をしないで計画的に野営することもビバークと呼びこともあります。以前、ロッキーマウンテン国立公園のバリエーションルートを登りに行った時「取り付きでは幕営禁止になっているのでテントは張らずにビバークにしてください」とレインジャーの注意がありました。テントを張ると生態系への影響があるというのです。ロープやヘルメットの色まで聞かれました。もともと厳しい入山規制があるうえにそこまで管理するのかと驚きました。