先日、自称山のベテランに出会ってちょっとお話をしました。何でも近郊の3千メートルの山に行ったらとても風がとても強くて寒いのでスキー用のヘルメットを探しているとのことでした。ひょっとしたら日本で山登りをする人の中にも寒さ対策でスキー用のヘルメットを使っている方もいるかも知れませんが、私は「へー、そうなんだ」などと思ったのでした。
スキー用のヘルメットは確かに暖かいのですが、登山用に比べればやっぱり重いし、かさばってしまうのです。山スキーとクライミングに併用できるスキーヘルメットも確かにあるのですが、それはもう登山用ヘルメットにかなり似通ったものになっています。その山のベテランは彼の友人であるもう一人の山のベテランに勧められたということでした。
一般的に冬山での頭部や顔面の防寒対策はバラクラバ(目出し帽)に登山用ヘルメット、その上からシェルのフードをかぶりスキーゴーグルというのが一般的です。ヒマラヤの高山でもシェルが羽毛服になったりバラクラバが薄手と厚手の2枚重ねなったりするくらいで、顔面の露出部を極力覆えばそれで十分なはずです。あとは我慢しかないのです。
彼がなぜ山のベテランかというと、この近郊の3千メートル峰に昨年は百回ぐらいは登頂していてエベレストにも行ったということでした。至れり尽くせりのガイド登山でもエベレストサミッターなら彼はエクスペリエンスドだと私は思ったのですが、実はベースキャンプまでのトレッキングでした。そして彼は強風、極寒の冬山はスキーヘルメットがベストだと信じていて、私に凄く寒いところでスキーヘルメットを使ったことがあるか聞いてくるのでした。
山で使う道具はいろいろ試して自分に合った道具を選んでいくことが大切です。だから彼がスキーヘルメットを実際に冬山で使ってみてそれを良しとするなら誰も文句は言えません。ただ私にはベテランだと自分で信じ込んでいる彼が冬山で一般的な防寒対策をすでに実践し経験していたとは考えにくいのです。先人たちが苦労して確立した山のスタンダードは多くの場合たいへん役に立つし、とりあえずはスタンダードを試すのが一番なのです。
ひょっとしたらその山のベテランはすでにいろいろ試していて、もっと快適な道具を探しでいたのかもしれません。ただどう考えてもゲレンデスキーのヘルメットは登山では不便なようでなりません。私はには我慢ができない山のベテランのわがままに思えてしまうのです。私はもう年寄りで山での我慢はできませんが、若い人たちにはあまり道具で楽をしようと考えてはもらいたくないのです。