私たちが大好きな麺類、その中でもこだわり派が特に多いのがお蕎麦です。味覚に鈍い私には細かい違いを味わうことは難しいのですが、確かに美味いといわれるお蕎麦には独特の風味が隠されているのが分かります。栄養価も高くて、ここアメリカでも自然食品や健康食品として人気があります。
もともと中国辺りが原産地とされている蕎麦ですが、南カリフォルニアにもカリフォルニア・バックウィートと呼ばれる野生の蕎麦が広く生育しています。海岸地帯から高山の森林限界付近まで、春から夏に白っぽいピンクの小さな花を咲かせて、花が枯れると鮮やかな赤褐色に変わります。枯れた花など本来は綺麗なはずはないのですが、夕日に照らされたりしてさらに明るくきらめいた赤褐色は私にはとても美しく見えてしまうのです。ほとんど一年中は乾燥して枯れ草状態になっているバックウィートの茶色い丘は(春先には緑になります)南カリフォルニアに見られる特徴的なアウトドア風景です。
バックウィートは貴重な食料としてアメリカインディアン達もパンなどに加工して食べていたということですが、それ以上に有効な薬草としても利用されていました。バックウィートの葉は薬草茶として飲まれ、頭痛、胃痛、下痢などに効能がある万能薬だったようです。矢や銃弾などで負傷した時には傷口にバックウィートの根をすりつぶした粉をあてがって治療したとのことです。
バックウィートの花から採れる甘さ控えめのハチミツには抗酸化物質やビタミンが豊富に含まれていて自然食愛好家たちに人気があります。バックウィートの花は一年を通じてほとんど枯れ野原状態になっているこの地帯でも長い間にわたって咲き続けているので、蝶やミツバチたちの生息には欠かせないものとなっています。ただの枯れ草にしか見えない植物が実は人の生活や自然環境に大きな貢献をしていることがわかります。在来種の重要性が再確認されて、以前ご紹介した迷惑千万の外来種ブラックマスタードなどとは対照的です。
残念ながら近所の野原に有り余るカリフォルニア・バックウィートの実をたくさん集めて蕎麦粉を作っても日本のようなおいしいお蕎麦は楽しめそうもありません。それでも蕎麦の実を挽いたり打ったりする知識や技術があるならぜひ挑戦したいところです。最近は日本でも輸入物の危ない粉を使ったお蕎麦が多く出回っているようですが、取り敢えずは蕎麦打ち教室などに参加して安心できる美味しいお蕎麦を自分で作れるようになれば嬉しいですよね。
英語ですが簡潔で詳しい解説