アウトドアジジ

2分で読める? アウトドアのアクティビティ、道具、自然に関するブログです。

深山の怪しい沼

迷彩ガエル

 


私達はいろいろな美しい珍しい景色を期待して登山や山歩きをします。夏の高山に広がるお花畑、冬に凍てつく岩稜など下界では出逢うことができない景色を山で楽しむことができます。その中でも最も神秘的で魅力的なのが深山にたたずむ小さな池や沼ではないのでしょうか。

 

もうだいぶ以前の話ですが島々より徳本峠に向かったときに森の中に突然現れた小さな沼がありました。沼の水は濃い緑色にたたずみ湖面には鬱蒼とした木々が暗く映り込んでいました。神秘的というよりは幽界に誘われるような怪しい雰囲気が周囲に漂っていました。同行していた妻は「Very eerily - とても不気味」などと言っていましたが、その不思議な景色に囚われていたようです。

 

そう云う怖いもの見たさというのも確かにあるのですが、それ以上に深山の池や沼では珍しい生態との遭遇を期待してしまいます。特に環境の変化に敏感な希少な両生類を確認できることが多いのです。両生類には絶滅に瀕している種が多く、生息地が厳重に保護されていることもあります。近郊の山では最近、絶滅状態にあったイエローレッグフロッグというカエルを250匹ほど生息地に放す保護活動が行われています。気候変動の影響もあるようですが、外来種による捕食やレクリエーション活動拡大などの影響も大きいとのことです。

 



先日も4時間ほどの山歩きの後に立ち寄った湖沼では1センチほどの無数の小さなカエルが辺り一面を移動しているのに出くわしました。以前ジョシュア・ツリー国立公園のオアシスで見つけたカエルと同じように巧妙なカモフラージュをまとっていました。ジョシュアツリーのカエルは薄い灰色に黒い斑点で周囲に点在する花崗岩とまったく同じ配色で一度見失うと見つけるのが本当に大変でした。ウジャウジャとご馳走が動き回っていても捕食する側はかなり目を凝らさないと捕らえるのは難しいようです。

 

岩の斑点のように見えるカエル

深山の池や沼には昔からさまざまな伝説があります。木や藪ばかりの森が突然ひらけていきなり怪しい光を映し出す水面が広がれば、妖精や竜神が忽然と現れても不思議ではありません。森林限界を超えて氷河地帯に広がるアルパインレイクも確かに美しいのですが、深い森に囲まれた神秘的で怪しい深山の池や沼の魅力にはかないそうにはありません。その存在を知ってしまえば山頂などはどうでも良い、ここだけは訪れてみたいととても気にかかってしまうのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

夫婦で登る  

我慢する関係

 

中高年になっても山登りは一人でもできますが誰かと一緒に登れれば楽しさも倍増するものです。良い登山パートナーを見つけるのは大変ですが、とりあえず簡単につき合ってくれるのが連れ添ってきた配偶者です。普段からお互いに我慢をして相手を率直に受け入れてきたからこそかなう最良で便利な山のパートナーです。

 

お気楽な夫婦登山といってもお互いに都合があるのは当然です。それでも他人と予定を調整するよりは遥かに簡単で多くの場合で思い立ったその時にそろって出かけることが可能です。熟年夫婦の中には普段から言葉もあまり交わさないのに夫婦で山登りなどできないという人もいるかもしれません。ところが傍から羨まれるように登山を楽しむ仲の良さそうな夫婦でもある程度は相手のわがままを受け入れて我慢しながら山を歩いているのです。

 

お互いに登山が大好きな夫婦でも体力や技術も違えば、興味の対象も異なり山に行く動機もさまざまです。ほとんどのおしどり夫婦が一緒に山に出かける時はどちらかが、あるいは双方が少しは我慢をして山を楽しんでいるのが普通でしょう。お互いに思ったようにかってに行動できないのは普段の生活でも同じで、そういうちょっことした不満を常日頃やんわりと受け入れているからこそ山にも一緒に出かけることができるのです。

 

私の若い友人のひとりはハネムーンから帰ってきてすぐに離婚してしまいました。ずっと一緒に山登りをしていて、岩登りをして登り着いた岩峰の上でプロポーズをして結婚したカップルです。奥さんに多額の学費ローンがあってそれが新婚旅行中に発覚したのが離婚の原因です。大事な経済的負担をずっと隠し通してきたことは大きな問題ではあるのですが、一緒に借金を返していこうという我慢をその友人は全く持ち合わせていなかったのでした。そこまで愛情がなかったと言ってしまえばそれまでですが、相手を率直に受け入れる気持ちやその努力も足りなかったようです。生活していくうちに新しい打開策も見えてきたかもしれません。

 

山登りを始めた高校生の頃、久しぶりに会った叔父が「人生は登山と同じだぞ」説教してくれたことがありました。その時は山の経験もないオヤジが偉そうに言っていると感じたものでした。今、思えば人生は我慢の連続でまさに一向に近づかない山頂を目指す登山行為そのものでした。一緒に山に出かける出かけないは別として、そういう我慢を知っている配偶者に恵まれたあなたは本当に幸せ者なんですよ。

 

 

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衝立岩墜落

臨死体験

 


私は若い頃から山登りを始めたのですが、けして一生を通じて山に没頭してきたという訳ではありません。それでも老齢になれば想い出深い山行をたくさん経験したことになりました。とりわけ青春時代での山の出来事は一生忘れることのない経験です。その中でも強烈な記憶として蘇ってくるのが高校生の時に挑戦した谷川岳衝立岩の山行です。

 

衝立岩のルートはアブミのかけ替えで登る人工登攀が中心です。フリークライミングが全盛の今のクライミングから見れば安直な登攀かもしれませんが、岩場の条件や天候などを考えればけして容易で快適なクライミングとはいえません。アブミをかけるピトンは数多くの再登者たちによってまるで雨後のタケノコのように岩の割れ目に無数に打ち込まれていて、そのどれもが不安定でどれを選ぶか迷ってしまうのです。不覚にも私は不安定なピトンにアブミをかけてしまい、次へと手を伸ばした瞬間にそのピトンは抜け落ちてしまったのでした。

 

古典的なグリップビレイで私のフォローを確保していたパートナーは即座に私の墜落を止めることができません。私は一瞬何が起きたのか理解できず気がつけば眼の前の岩壁がもの凄いスピードで上部へ流れ去って行くのでした。その瞬間は今でもはっきりと記憶しています。墜落の状況を理解した私は両親の顔はもちろん、それまでの人生の記憶全てがほんとうにその一瞬のうちに蘇ったのでした。墜落した時間は3秒くらいだったかもしれませんが、気がつけば私はオーバーハングに宙吊りになる状態で停止し怪我は全くありませんでした。

 

一瞬で蘇った人生の記憶で若いながらも死ぬ時はこういうものなんだと妙に納得してしまい臨死体験は実存すると感じてしまったのです。必死で墜落を止めてくれたパートナーの指先は流れるロープの熱でえぐられてしまいました。今、思えば、ロープが流れてしまったからこそ不安定な支点も崩壊せずにすんだと胸をなでおろしているのです。「落ちる時は声を出せよ」は彼の言葉でしたが、臨死体験が強烈で悲鳴を上げたかは記憶にありません。オーバーハングで声が届かなかったのかもしれません。

 

グーグルレンズ

テクノロジーの時代

 

登山や山歩きにでかける多くの人達が楽しみにしているのが野山に咲く花々との出会いです。中には山野で見かけるほとんど全ての花の名前を知っている人も少なくはありません。どうしてこんなにいろんな名前を知っているのだろうと不思議に思ってしまうのですが、今ではズボラな私でも大変頼りになる道具があります。グーグルレンズです。

 

グーグルレンズはスマホのアプリです。知りたい花や虫の姿をスマホのカメラで捉えると膨大なデータの中から適合するものを探し出しその名前を即座に教えてくれます。もちろんネットに繋がっていることが条件ですが、わかりにくい図鑑を片手にあれでもないこれでもないと奮闘する必要はもうありません。

 

こちらに出回っている図鑑はハンディなフィールド図鑑でも北アメリカ全体を対象としたものが殆どで検索すべき対象が膨大な数となっています。野鳥ガイドなどはスズメの仲間だけでもたくさんの種類が載っているので熟練者のアドバイスがなければ特定はほとんど不可能です。鳥をグーグルレンズで調べるのはちょっと難しそうですが花ぐらいなら即座に調べられるようにようになりました。( 望遠レンズで鳥を撮影しパソコンのモニターでグーグルレンズを使うこともできます )

 

我々の世代はコンピューターが広く普及する前の世代で、大人になってもネットもなければスマホはもちろん携帯電話でさえありませんでした。「これから何でもコンピューターだぜ」学生時代に友人が不安げにボヤイていた時代です。当時アメリカの大学では初心者向けコンピュータ講座が一般教養の必修になっていて、まだウインドウズも開発されていませんでした。今では初歩的なITスキルは現代人の常識で、小学生でも知っているようなことを大学で真面目に教えていたのです。

 

グーグルレンズがあればもう図鑑は不要ですし、それどころかチャットGPT の登場で考えて文章を書く必要もなくなったようです。登山活動そのものもゴーグル型端末と運動機器の組み合わせで本格的な登山経験が十分楽しめそうです。スマホで何でも済ませる時代になってパソコンでさえ持っている人が少なくなりました。急速なIT機器の発達とその入れ替わり、驚異的なAIの進歩で学生時代の友人のボヤキがいよいよ現実となってしまいました。

年寄りと登山

限界年齢

 

若い人には興味のない話題です。アメリカのバイデン大統領がスピーチを終え演壇から降りる際に躓いて転んでしまいました。私よりは高齢ですが他人事とは思えません。体力が続く限りいくつになっても好き勝手に山に遊びに行っていいものかと考えてしまいました。自動車の運転免許返納のように山登りを諦めなければならない年齢があるのかもしれません。

 

若い時は「なぜ老人はよろめくのか、なぜ走れないのか」と不思議に思い、それはただの不摂生、長い間にわたって体を動かしてないためだと考えていました。というのも元気に活動するお年寄りがたくさんいて、そういう老人達はオリンピック選手のように特別だということに気づいていなかったのです。毎日積極的に運動を続けていれば誰でも元気に年を取れると考えていたのです。実際は才能に恵まれた運動選手のように元気なお年寄りは両親から年を取りにくい遺伝子を受け継ぎ、怪我や故障にも無縁、しかも全てに渡り健康的な生活習慣を無理なくこなせる選ばれた人達なのです。

 

体が思うように動かなければ山でトラブルが発生する可能性が倍増します。先日のスキー登山の際にちょっと一休みとトレイルから外れた時にバランスを崩し迂闊にも転倒してしまいました。石がゴロゴロの山道で足首の自由が効かないスキー靴と長いスキーをザックに取り付けいたせいですが、高齢登山者が転倒するのはこういうことかと実感しました。また運動能力がそこそこあっても、隠れた病が進行していて気づかずに山で発症してしてしまうこともあります。私の古い友人は山スキーのベテランでしたがスキー登高中に倒れてそのまま逝ってしまいました。

 

以前、近隣の山で会った韓国人の男性は「俺は74歳だ。お前はいくつだ?俺は毎日登って来るんだぞ」と自慢げに語っていました。その男性も登り慣れた同じ山で滑落し遭難死してしまいました。山で緊急事態に陥れば多くの人達に多大な迷惑をかけてしまいます。滑落して他人を巻き込み自分だけでは済まない状況に陥る可能性もあります。ある程度の年齢に達したら達成感のある登山は諦めてスローダウンが必要になるようです。それでも岩登りの易しいピッチなんかではやっぱり自分でロープのトップを引きたいものですよね。

 

 

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チェーンスパイクと登山靴

正しい道具

 

ちょっとした雪の山道などで便利なのがチェーンスパイクです。こちらではマイクロスパイクと呼ばれ、代表的なブランド名でそのまま呼ばれています。さて、問題なのはその使い道です。これがあればどんな雪山でも登れると考えている人があまりに多いのです。雪山に親しみのない南カリフォルニアでの話です。

 

日本では昔から多くの人達が雪山、冬山登山を楽しんできました。そして登山といえば当然、山頂を目指すことです。ところが北米の場合は山頂を迂回するトレイルを歩き回るハイキングやバックパックキングが一般的です。登山とハイキングの棲み分けがはっきりとしていています。登山をする人はごく一部で、ほとんどの人達が専門的な登山用具に対する知識に乏しく、正しい道具選びができません。

 

雪山ならマイクロスパイク、何処でも登れると思ったマイクロスパイクを試してみれば安心して歩けないことも多い。そこで「やっぱりアイゼンだ」と言って、トレランシューズやハイキングシューズにアイゼンを履こうとするのです。日本では運動靴のようにふにゃふにゃの靴に装着したアイゼンが役立たないことは多くのハイカーが知っていますし、そもそもしっかりと装着できません。こちらではアイゼンの前に登山靴 (アルパインブーツ) という山の常識が初めから欠けています。

 

「登山靴が必要です」という当たり前の注意書き

 

先日登った春山ではグサグサに腐った雪の下降でした。所どころ岩やザレが出てきたのでアイゼンを外すことにしました。まだまだ雪の急斜面は残っていましたが柔らかい春の雪でしたので登山靴だけで安全に軽快に素早く下山することができました。トレッキングシューズにマイクロスパイクの登山者はキックステップの技術も知らずソロソロと超慎重に下山していました。

 

近年はさまざまな道具が市場にあふれ、それぞれの道具が特定の条件に最適化されように作られています。言い換えれば、かなり限定的な道具が増えてきているということです。軽量で快適なマイクロスパイクやトレランシューズは昔はなかった素晴らしい道具ですが、使える場所が限られていることを忘れてはなりません。もちろんその限定的な使用範囲も経験と体力によっては大幅に拡大できることも事実なのですが。

コロナ禍とアウトドア

アウトドア大ブーム


世界を揺るがした新型コロナパンデミックもようやく終焉を迎えたようですが、その発生源は未だに明らかにならず、多くの人がこれからの経済に不安を覚え、政治に不信感を抱いきました。3年間の引きこもり生活はアウトドアの活動にも大きな影響が及びました。こちらではコロナの引きこもり時に野外活動に目覚めた人が多数、スキーやキャンプにハイキングと大勢の人達が出かけるようになりました。

 

今シーズン、全米でスキーを楽しんだ人は6,400万人を超えたと言われ、コロナ禍前は2,000万人にも届かなかったので業界では史上最大の収益となりました。市場を独占するアルテラとアスペンの2大企業は膨大な利益を獲得したはずです。キャンプ場でもすでにシーズン中の週末はもちろん平日も予約でいっぱい、近隣の山野ではマウンテンバイカーが大人数でグループをなして走り回っています。

 

コロナ禍では生活に必要な最低限のビジネス以外はすべて営業不可となりました。人々は仕事や学校に行けずに家に引きこもりとなりましたが、それでも散歩などの野外運動はある程度認められました。そのため近くの公園や野山に多くの人が出かけるようになりました。テーマパークや映画館、買い物や外食などが制限されればアウトドアの遊びしかありません。今まで野外活動に全く無縁だった人が新規参入してくるのも当然です。

 

感染の拡大を危惧した自治体などは公園の閉鎖や野外活動グループの人数制限を行いました。テレビでは「こんなに多くの人が固まってハイキングをしています」などと不安感を煽っていました。給付金をいくら出しても人を家に閉じ込めたままにしておくのは所詮無理な話です。しびれを切らして大勢でアウトドアに出かけて来るのでした。アウトドアのアクティビティの中でも、登山などに比べれば辛い思いをしなくてすむスキーやサイクリングなどは特に参加人口が大幅に増えたようです。

 

いったん規制が緩和されるとスキー場は平日でも満杯、自転車は在庫が全て売り尽くされ、船の中の積荷でさえも販売予約済みという状況になってしまいました。パンデミックで通関待ちをしていた大量のアウトドア用品が過剰在庫となって投げ売りされた後は、インフレを理由に短期間に同じ商品で何回も値上げが繰り返されています。アメリカでは需要拡大と労働者不足、脱炭素によるエネルギー不足、過剰な給付金などによってインフレが止まりません。欲しいギアは今のうちに買いだめしておいたほうが良策です。

 

*22,23年におけるスキー場利用者の記録的な増加は、西海岸の記録的な大雪、コロナ終了のリバウンド、シーズンパスの普及としています。

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