アウトドアジジ

2分で読める? アウトドアのアクティビティ、道具、自然に関するブログです。

道具で上達

ゴルフクラブの謎


私はゴルフをやらないのですが、ゴルフ好きの知人が新しいゴルフクラブの話で盛り上がっていました。通常の物とは値段が大幅に違うクラブで値段差以上に確実にゴルフが上手くなるということでした。そんな訳はあるはずはないとゴルフマニアとそのスポーツの安直さを軽蔑したのもでした。ところ気が付けば山やスキーの道具にも同じことがいえるのでした。

 

私はテレマークスキーという古典的なスキーをもう何十年の楽しんでいるのですが、その道具の進歩と遍歴は激しく、古くて使いにくい道具は次々と淘汰されていったのでした。スキーブーツは革製からプラスチックへ、スキー板はどんどん太くなり、ビンディングはブーツを固定するシステムがすっかり変更されてしまいました。それによって技術は確実に進歩しゲレンデのカチカチのバーンを高速カービングで滑降したり、腰まで埋まる悪雪を自在に滑れるようになりました。ゴルフクラブのように確かに道具によって技術が向上したのでした。

 

それでは古い道具は完璧に過去の遺物となって忘れ去られたのかというとテレマークスキーの場合は事情が違います。実は古い道具にはそれなりの有効性が有り、その道具でなければ楽しめないことも多いのです。そのための技術を習得するのは容易ではありませんが、あえてそれに挑戦する人や苦労の末にそれを獲得した人たちが自己満足(?)でそういう古いスタイルの道具を使い続けているのです。

 

ライミング用の専用靴では岩に吸い付く新しいゴム底が開発されると難易度を示すグレードが一段下がったりしたものです。ただこの時はクライミングの面白みを半減させるからなどといって使用を拒む人は皆無で皆んな一斉に新しい靴を買い求めたのでした。どうやら古い道具には細々と生き残るモノと完全に消え去ってしまうモノがあるようで、同じクライミングの道具でもプロテクションに使う古典的なナッツ類が革新的なカム類に完全に入れ替わってしまうようなことはありませんでした。

 

伝統的な道具によってしっかりと確立された古い遊び方は新しい画期的な道具によって忘れ去られてしまうことはありません。どんなに軽量で快適なテントや調理器具が登場してもタープと焚き火のキャンプを楽しむ人がいます。ゴルフクラブのように金を出せばたやすく上達できる道具も嬉しいのですが、そういう道具で本来の遊びの楽しみを忘れてしまうと本末転倒です。

 

 

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フリーソロ

アディクション



ライミングを始めて少しずつ 自信をつけてくると挑戦したくなってくるのがフリーソロです。フリーソロはロープなど安全を確保するための道具をいっさい使わずに大岩や岩壁を一人で登るクライミングスタイルです。例えどんなにヘボなクライマーでも一度は憧れてしまうのがフリーソロなのです。

 

数年前にヨセミテの大岸壁をロープも付けずにフリーソロをするエリートクライマーの映画が話題になりました。一般スポーツ(クライミングはオリンピックに採用されましたけど)ならオリンピックの金メダリストのようなクライマーが為せる偉業です。とはいえ凡人でも、岩登りのゲレンデやちょっと大きなボウルダーでフリーソロの真似事に挑戦した人も少なくはないはずです。能力の7、8割ぐらいのレベルで味わうことのできるフリーソロの緊張感はある種の中毒依存症状も自覚してしまうのです。

 

私は山登りを始めた頃はどちらかというと高所恐怖症でした。初めての本格登山で八ヶ岳の鎖場を見上げた時は足がすくんだものです。穂高滝谷のドーム登攀では岩登りはもういいと思いました。それがどういう訳か足元が切れ落ちた高い所が気にならなくなり、ミスをすれば大怪我が免れない困難な大岩や、易しいけど堕ちれば確実に死ぬマルチピッチルートを何回かフリーソロしたことがあります。若気の至りといえばそれまですが、その緊張感や満足度で確かにまた挑戦したいという誘惑にかられてしまうのです。中毒依存症状を自覚し始めるのです。

 

恐ろしいことも慣れてしまえば快感になってしまうという現象は心理学的に証明されているのかもしれませんが、怖さに対する警戒や緊張、それを克服した時の達成感に大いに満足してしまうことがあるようです。そしてそういう高揚感が病みつきになってしまいどんどんエスカレートしてしまう危険性があるのです。これはクライミングばかりでなく困難な登山や高齢者登山にも共通しています。自分の実力をしっかりと把握して取り返しのつかない事故を防いでいくことが大切です。身の丈に合った行動が必要なのですが、チャレンジと向上が山登りを楽しくしているのも事実ですよね。困ったものです。

 

 

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筑波山

ガマの油

 

関東の名峰といえば筑波山ですよね。古くは万葉集にも読まれ、田園風景の中に独立峰のようにたたずむその姿は太古の時代から常陸の国に暮らす人々に親しまれてきました。小学校の低学年、遠足で登った人生初めての山でした。

 

私が入学した小学校では筑波山の遠足が定例行事でした。近所の年上の悪ガキたちは筑波山で買ったというガマガエルのマスコットを皆んな持っていて、それを見せびらかし私はとても羨ましく感じたのでした。普段はお小遣いも貰えない田舎の貧乏な子どもたちです。特別に遠足だからといって貰った小銭で買ってきた手のひらの乗る小さなマスコットでした。私もこれが欲しくて筑波山の遠足が楽しみで仕方なかったのでした。

 

筑波山はなぜガマガエルなのかというと、江戸時代に山麓の村に住む男が江戸に出て巧みな口上でまがい物の妙薬を売り始めたことに起源があるようです。鏡を貼った箱に筑波山に生息するという四六のガマを入れると、その自らの醜さにおびえ脂汗を流し、それを集めて妙薬 (ガマの油) に仕立てたという口上です。映画の寅さんのように軽快な語り口で聴衆を引き付けるその口上は古典落語にも引き継がれ、つくば市無形文化遺産にも認定されているそうです。

 

筑波山といえばガマガエル

筑波山登山といっても小学校の1年生か2年生です。はっきりとは覚えていませんがケーブルカーを利用したようです。日本が絶好調の高度成長期、東京オリンピックの頃ですが筑波山のケーブルカーはなんと大正14年からの営業だそうです。ちなみにロープウエイの方は昭和40年からの営業で当時はまだなかったのかもしれません。山頂の広場に開けた斜面にはジュースの空き缶が大量に投棄されていて、今から思えば世界史上でも類まれな高度成長を遂げた日本の象徴だったようにも思えてくるのです。

 

土産物屋ではガマガエルのマスコットと一緒に天然色の絵葉書も購入しました。それには「弁慶の七戻り」という大岩がはさまった奇岩の写真があって、こんなのなかったと大きく失望したのでした。登山コースを辿って自分の足で登らないと拝めない奇岩なのです。他にも大仏岩やガマ石など低山には珍しく巨岩が多く、つい最近まではボルダリングや岩登りのゲレンデとして人気があったようです。

 

そんな筑波山ですが10年ほど前に再来したことがあります。山頂の土産物屋では50年以上も昔に小学生の私が買い求めた物と同じガマガエルのマスコットが売られていました。この時もただ車で立ち寄っただけなので「弁慶の七戻り」はまだ拝めていません。

 

 

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友達がフレンド

お餞別

 

山登りに使う様々の道具は昔からけして安価なものではなかったのですが、その中でもクライミングに使うカム類はとても高価です。どうしようも無いのがその使い道でクライミングにしか使えないのです。クライミングをやめてしまえばただの鉄クズ(アルミですけど)で、多くの山道具が普段の生活でも役に立つのと大違いです。そういう無意味で高価なフレンドというカムをセットで私が海外に出ていく時に餞別としてくれた友人がいました。

 

旅立つ人にわたす餞別というのは贐(はなむけ)のことで、むかし旅人が使う馬の鼻を旅先の方角に向け道中の安全を願ったことが発端だそうです。当時の感覚で餞別は1000円や2000円程度が妥当で、店先で買おうか買うまいか悩んでいた私にセットで何万円もするクライミングカムを餞別として買い与えてくれたのでした。「今月は金がないから山行はキャンセル」と時々同行を断る金欠病のその友人にとっては大きな痛手にあったに違いありません。「向こうでも登るんだろ」といって嬉しい贐を差し出してくれたのでした。

 

フレンドはクライミングカムの元祖で、その発明は正にノーベル賞クラスです。ヨセミテのエリートクライマーであった開発者は当初そのプロトタイプを上着の下に隠し持って最難ルートの開拓に挑んだといわれています。滑り止めのチョークでさえ問題視され倫理の厳しかった当時のクライミングシーンでは、容易くプロテクションがとれるクライミングカムは岩登りの冒険心を脅かし、その魅力を半減させる邪道な道具だと多くの人が考えていました。

 

とはいえ、人々は一度その道具を使ってみればその便利さに驚愕し即座に購入に踏み切ってしまうのでした。「一番信用できるのはやっぱりボルトだよね」今では危なくて使えないリングボルトでさえ最大の信用を得ていた当時、岩の割れ目にはめ込むだけのナッツ類は日本のぼろぼろの岩場に受け入れられることはありませんでした。ところがクライミングカムはその利便性、多様性であっという間に日本のクライミングシーンに普及してしまったのでした。

 

今では多くのクライミングメーカーが様々なカムを製造販売していて、伝統的なクライミングに挑むための必携の道具となっています。友人が餞別としてくれたクライミングカムは無くしたり、回収不能となったりして数が減ってしまいましたが、未だに現役として使用が可能です。カムを支えるシャフトは棒状のリジット式で、ワイヤー式が一般的になった今ではレトロ感は拭いきれませんがその有用性は健在です。

 

せっかく友人が泣きなしの金をはたいて餞別としてくれたカムですが、クライミングに行く機会もそれほど多くなく使い倒すほどの使用はできませんでした。久しぶりに道具箱を開けたりしてみればそういう懐かしい思い出が蘇ってくるのでした。

 

 

*だんだんネタが無くなって重複してしまいましたが、以前にもこんなのを上げていました。

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オオツチグモ

ハロウィーンの主役


以前はほとんどの日本人が知らなかったハロウィーンというお祭りですが、今では若者たちが奇抜な仮装をして大騒ぎをする秋の一大イベントとなっています。ハロウィーンのもう一つの楽しみはオバケで、近くのテーマパークでは毎年この時期になると広い敷地全体が盛大なお化け屋敷となって多くの来場者を迎えます。気味の悪いゾンビやモンスターとともに飾り付けに欠かせないのが黒い大蜘蛛です。

 

夏も終わり日も少し短くなった夕方に裏山などを散歩していると必ず出くわすのがこの黒い大蜘蛛タランチュラです。多い時は10匹くらい道のあちこちで見かけることがあります。じっと立ち止まっていたり、軽快に長い脚を動かして歩き回ったりしています。初めて出くわせば確かに恐ろしいハロウィーンにふさわしい大蜘蛛で驚いてしまうのですが、見慣れるとなんとなく可愛らしくカッコ良い生き物に見えてきます。

 

 

スパイ映画で寝ている主人公の胸の上を這い回る毒グモという印象が強いタランチュラですが実は大した毒は持っていないそうです。手に這わせて拾い上げたりする人もいます。それでも腹部の刺激性のある細かい毛を飛ばすことがあって、それが皮膚に刺さったり目に入ったりするとちょっと面倒な事になってしまいます。こちらの子どもたちは蜘蛛がとても苦手で、大人でも刺されるのではと怖がる人が多いです。それもそのはず猛毒のブラックウイドウ(クロゴケグモ)が家のまわりにたくさん生息しているからなのです。

 

タランチュラはおとなしい習性なのでペットとしても人気があります。種類も多く鮮やかな色が特徴の種もあります。おまけに寿命が長くてメスなら10年以上つきあえます。餌も毎日頻繁に与える必要がなく比較的に簡単に飼育ができるようです。相場はどうやら日本では5千円くらいからのようですね。怠惰な私でも飼えそうですが、今頃の季節なら散歩やジョギングでいつでも出会えるのでそれで十分満足してしまいます。それにしても軽快に歩き回るその姿はとてもカッコ良いのです。
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(参考記事)magazine.cainz.com

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登りナガラ音楽を聞く

 

オープンフィット


以前、イアホンを耳にあてての登山に触れたことがありますが、多くの人が山ではナガラ聞きはしないようでした。当たり前ですが山では鳥の声や風の音など自然をたっぷりと楽しみたいのです。外音を遮断してしまう不安もあります。とはいえ私のように好きな音楽をできれば登山中でも楽しみたいという人も少なくは無いはずです。最近、秀逸なオープンイアー式のイアホンに出会ってますます快適に野外でパーソナルに音楽が楽しめるようになりました。

 

オープンイアー式のイアホンは耳の穴をふさがないので、周辺の音も自然に聞こえるのが特徴です。車などの接近も察知できるので自転車やジョッギング時でも安心です。エアポッドなどのイアホンは耳の穴を密閉してしまうのでランニングの時などは着地のショック音なども気になります。搭載マイクで外部の音を拾う仕組みもありますが違和感はぬぐえません。

 

さて問題になるのは音質です。そもそも普通のブルートゥース接続では良い音は望めないし、ましてオープンイアー式では今まで薄っぺらい音しか鳴りませんでした。今回購入した製品では豊かな低域音で深みのある臨場感が楽しめます。かなりの軽量なので長いこと耳に掛けていても違和感はありません。さらに音漏れもかなり抑えられているようです。スマホと繋げて使うので電話通話も普通にできます。

 

イアホンやヘッドホンは外部を遮断して自分だけで楽しむ身勝手な物なのですが、高性能のオープンイアー式の登場でだいぶ世界が変わったようです。音量をひかえれば友達と会話を交わしながらバックグランドとして好きな音楽が十分楽しめますし、もちろん大きな音量で迫力のある歌や演奏を味わえます。スキーやハイキング時にブルートゥーススピーカーを迷惑に大音量で鳴らす若者たちにもぜひ使ってもらいたい道具です。

 

 

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*こちらの商品はアプリ不可で注意が必要なようです。

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救助用搬出カゴ

便利なテクノロジー



先日、ハイキングに出かけたのですが、登山口に向かう最後の道路が通行止めになっていました。しかたなく他の所へ予定を変更。幸いよく通ったクライミングエリアの近くだったので久しぶりにちょっと行ってみようということになりました。そこには30年以上も前に初めて訪れた時に見かけた救助用の搬出カゴが昔と同じように立木に結び付けられていました。

 

おそらくそのカゴは私が初めて目にした頃よりずっと以前からそこに設置されていたに違いありません。実際に使われたことがあるのかは不明ですがテクノロジーが発達した今の時代、これから使われることはまずないでしょう。スマホで救助を要請しヘリコプターでピックアップというのが当たり前です。誰かが救助を呼びに山を駆け下り、他の人が応急処置をほどこす。頭数があればカゴに遭難者を乗せて自分たちだけで運び下ろす。過去にはそういう流れが普通でした。携帯電話がなかった昔の話です。

 

有名なターキッツの対岸にある自殺岩

最近ではスマホの電波が届かなくても世界中どこでも通信衛星を経由して救助要請ができるディバイスも普及して、日本ではココヘリなどの格安な救助システムも人気です。最新のアイフォンでは緊急時に衛星に電波をとばせる機能もあります。将来的にはスマホの通信は衛星経由が普通になって世界中どこでもどんな僻地でもインターネット接続や通話が可能になりそうです。

 

自殺岩頂上よりターキッツ

衛星デバイスを購入する人たちの大きな動機は下界と同じように家族や友人とテキストメッセージを交換したいというものです。もちろん緊急時にSOSシグナルも送信することもできます。疲れて歩きたくないからヘリを呼ぼうというのは問題外ですが、ごく最近までは山に行けば連絡が途絶えるのは当たり前でした。だからいろんな準備をちゃんとしたし、冒険への期待も高まったものでした。救助用の搬送カゴを使う必要がなくなったのは嬉しいのですが、何となく山の面白みが失われてしまったような気もするのです。

 

 

*改めてこのビデオを見てみたら最後に同じような締めくくりになっていました。テクノロジーの便利さと安心が気になるのは贅沢な現代人の悩みかもしれませんね。

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